2023年度版・主要大学学部別難易度ランキング(文系)

 あれこれと説明する前にランキング表を貼っておこう。どのように決定したかなどの細かい説明に興味の無い人は後の部分は読み飛ばしてもらって結構なので、表を眺めて楽しんでほしい。なお当ランキング表はあくまで「一般受験(共通テスト利用などを含む)」で合格する難易度を表しており、各種推薦入試については考慮していない。また記載されているのは「河合塾で偏差値が公表されている大学、学科のみ」である。国公立大学に関しては網羅したが、私立は主要な大学のみで全てをチェックしたわけではない。特にC3にランクされる私大は他にも多数あるはずだ。

 

 このランキング表は基本的に河合塾の公表している偏差値をベースにしている。しかし文字通り偏差値順に並べただけではない。例えば慶應義塾総合政策学部は偏差値70.0だが、67.5の東京大学各学部よりも2ランクほど下になっているのがわかるだろう。これは偏差値をベースにしつつも科目の種類、科目数、配点、共通テストのボーダーなど様々な要素を総合的に考慮して決定しているからだ。後程詳細に説明するが、原則的に私立大は同偏差値の国立大よりは低いランクになっていると認識してもらいたい。

 より詳しく解説していこう。まず河合塾の偏差値についてだが、50.0、52.5、55.0…のように2.5刻みになっている。50.0と表記されている場合には50.0~52.4までが、52.5の場合には52.5~54.9までが同ランク帯として包括されているということだ。予備校の模試というものは受験者の数が限られている以上、どうしてもサンプルのブレによる誤差が年度ごとに生まれてしまう。それらの誤差に振り回されず、ある程度の目安として大学のレベルを把握するには良い手段と言えるだろう。したがって当然であるが当ランキング表も同じランクにあるからと言って完全に同レベルというわけではなく、多少の上下が存在することは覚えておいてもらいたい。

 しかしこの制度には「境界」が生じるという欠点がある。偏差値52.4と52.5は実際には0.1の差だが、河合塾の表記法では前者は50.0、後者は52.5とワンランク離れてしまう。逆に偏差値52.5と54.9は2.4の差があるがどちらも52.5表記だ。この境界に惑わされずなるべく正確なランキングを作るためには同じ大学内での他学部、他学科との比較や他大学との序列関係の考慮が必要となってくる。

 原則的には「同じ大学であれば学部間で大きなレベルの差はない」という考え方を採用した。もちろん学部ごとに偏差値が高い傾向、低い傾向自体は存在する。その最たる例は医学部医学科であり、どの大学においても抜きんでている。しかし法学部、経済学部、人文学部などの一般的な文系学部は顕著なレベルの高低差があることはほとんどなく、特に国公立大においてはその傾向が強い(私大は学部学科ごとにある程度差がつきやすい)。したがってほとんどの学部学科が偏差値55.0であるのに一つだけ偏差値57.5の学部がある、と言った場合、その偏差値57.5は55.0との境界に近い数値であると考え、同ランクとして査定している場合もある。すべてがその限りというわけではなく、あくまで学科の特性(心理系や国際系は総じて人気が高い)やいわゆる「看板学部」であるかどうかなどの点も考慮しながらではあるが。

 

 もう一つ大事な点は「科目」の違いである。そもそも偏差値は二次試験や一般試験で課せられる科目に基づいて表記されている。例えば二次試験の科目が英語、国語、数学2Bであるなら、その大学の偏差値はあくまでもこの3科目に限定したものが表記されており、社会や理科科目の成績は関係ない。ここで重要になってくるのが各科目の「特性」である。統計学の知識がある人なら知っているだろうが、偏差値とは簡単に言えば平均的集団からの「距離」を示したものだ。この平均的集団がどれほど散らばっているかを表すものが「分散」であり「標準偏差」である。そして各科目には標準偏差が大きい、小さいといった傾向が存在する。偏差値の算出方法の詳細は自分で調べてほしいが、標準偏差が大きい科目は(上にも下にも)極端な偏差値が出にくい。一般論として、数学は標準偏差が大きく社会科目は小さい。つまり数学では高得点を取ったとしても社会科目に比べて高い偏差値は出にくいのだ。この点を考慮し、数学が課される試験形式の場合は社会科目で受験できる形式と比べて「偏差値+2.5」のアドバンテージを与えた。例えば「英語・国語・数学2B」の偏差値60.0は「英語・国語・社会」の偏差値62.5と同ランクであるということだ。

 さらに「科目数」も重要である。前提として、すべての国公立大は共通テストの受験が課せられており、特に国立大は約7割ほどが「5教科7科目」を課している。当然だがその大学を志望する受験生は7科目勉強しなければならない。一方で私立大は共通テストの受験を義務付ける大学も増加傾向にあるとはいえ、まだ大半は一般試験のみで受験できる。そしてその多くは2-3科目で受験可能だ。

 上述したように偏差値はあくまでも二次試験・一般試験の科目に対してのみ算出され、国立であろうが私立であろうが、大半の大学の二次・一般試験は「英語・国語・社会」の3科目、ないしは1-2科目である点は共通している。しかし共通テストを受ける必要がなく英語・国語・社会の3科目だけを勉強していればいい人間と、共通テストも含めて7科目を勉強した上でさらに二次試験で英語・国語・社会を受けなければならない人間とでは、同じ偏差値を取るにも明らかに労力が違う。その3科目に割ける勉強時間が大きく制限されるからだ。つまり国公立大の偏差値50は私立大の偏差値50よりもはるかに難易度が高いということだ。

 そうした点を踏まえ、国公立大は同偏差値の私立大よりも高めにランク付けられている。具体的な決定方法としては、複数の受験パターンがある大学の偏差値、共通ボーダーなどを参照している。例えば金沢大の文系一括入試は3教科で受験できるパターンと5教科7科目の通常パターンとが存在しており、同様のものが滋賀大学横浜市立大学高崎経済大学などにもある。また大半の私立大学は国公立志望者向けに4教科、5教科の共通テスト利用入試を用意している。これらの科目数の差による偏差値、共通ボーダーの違いを比較検討し、国公立大と私立大の位置づけを決めている。もちろんひとえに国立、私立と言っても各大学によって科目数は異なるのですべてがその限りではないのだが、全体的な傾向としては「私立偏差値+5=国公立偏差値」となっていると考えてもらってかまわない。適当に決めた基準ではなく、上述のように詳細に検討した結果そのような数値差になっている大学が多い、というだけの話であるが。

 

 同じ学部内で各学科ごとに偏差値差が大きい場合の扱いをどうするか。ある意味これがいちばん難しい点であった。特に教育学部や文学部、外国語学部などは学科が多岐にわたることが多く、人気学科と不人気学科で難易度の差も大きい。本来であれば各学科ごとにわけて記載するのが最も正確であるが、パっと見で楽しめるランキング表としての機能を追求するためにはあくまでも学部単位にこだわりたかった。

 まず全体的な判断基準として「看板学科の有無」「学科ごとの募集人数の偏りの有無」を考慮している。例えば中央大学法学部は法律学科、政治学科、国際企業関係法学科の3学科があるが、法律学科のみ偏差値62.5で他の2つは57.5である。しかし世間一般に「中央の法学部」と聞いて広く認知されているのは法律学科であり、募集人数も他学科よりはるかに多い。したがってこのケースでは法律学科を学部全体を代表するものとみなして評価している。反対に特に著名な学科もなく、学科ごとに募集人数の大きな偏りも無い場合は全体の平均を採用している場合もある。また「教養学部」「文理学部」などのように学問としての傾向も全く異なる雑多な学科がひとまとまりとなっている学部の場合には、「福祉学科」などの他と比べて明らかに難易度の低い不人気学科は評価の対象に含めず無視している。

 個別の学部について捕捉しておこう。教育学部に関しては「中等科の文系科目学科」を評価の対象とすることにした。初等科と中等科が分かれている場合には初等科は無視して中等科のみを対象とし、分かれていない場合には国語科、社会科、英語科の各学科を対象にしている。例えば東京学芸大学がA3と非常に高いランクになっているのはこのためで、初等科の難易度はもっと低い。また理系科目学科や技術科、家庭科、特別支援科などは対象に含んでいない。文学部、外国語学部は全体的な傾向として「英語科」「日本文学科」「英文学科」「史学科」などは募集人数が多く偏差値も高い。対照的にマイナー言語を扱う学科は大きくレベルが落ちるため、前者のみを評価の対象としている。情報科学部、人間科学部などの文理融合系の学部は「文系科目の入試形式」を評価の対象としている。同じような学部名なのにある大学は載っていてある大学は載っていないという場合、前者は文系受験が可能だが後者には用意されていないということである。

 

 その他にもさまざまな要素を考慮しているが、そのすべてを書いていてはキリがないのでこのくらいにしておこう。なぜ○○大学の○○学部は○○より下になっているのか?などの質問・疑問があれば気軽にコメントを寄せてほしい。