「MARCHは簡単」は本当なのか?進学校の進学実績から検証する

 ということで、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県の偏差値60以上の進学校の進学実績を調査しまとめてみた(偏差値は下記のリンクを参照)。

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偏差値60以上の全ての高校をチェックしたが、附属校かつ生徒の大半が内部進学している高校は調査対象から外している。また「理数科」「選抜コース」など複数の学科やコースを設置しており、各学科・コースごとに偏差値が大きく異なっている高校の場合、原則的に「普通科」の一番偏差値の低いコースが偏差値60を超えていれば調査の対象に含めた。

 今回は「合格者数」ではなく「進学者数」を調査した。大半の高校が公表している進学実績は「延べ合格者総数」であり、一人で複数の大学・学部に合格した場合そのすべてをカウントしている。したがって1学年に生徒が300人しかいないのに合格者数は1000人を超えているというようなことがザラであり、実態が把握しにくい。より正確な傾向を掴むため進学者数を調べることにしたが、進学者数をある程度正確に公表している高校はたったの21校しか確認できなかった

 では結果を見ていこう。高校名の上の数字はその学校の偏差値を示している。75-72のように表記されている場合は複数のコースの上限と下限を意味している。表の左側を見ると「最難関」「難関」などと書かれ色分けされているが、これは各大学を大まかな難易度ごとにグループ分けしたものだ。いわゆる「東京一工」と医学部医学科を最難関とし、難関、準難関、中堅と4段階に区切った。記事タイトルの(G)MARCHは準難関にカテゴライズしている。なお医学部医学科に関しては大学を問わずひとまとめにしているが、東京大学理科三類のみはここに含めずそのまま「東京」のほうでカウントした。原則的には令和4年度のデータを記載しているが、学校によっては令和3年度のデータしか入手できなかったためそのまままとめている。

 最下部の段落は「Percentile(パーセンタイル)」と表記されているが、これは「進学者全体のうち上位何割がそのランク以上の大学に進学しているか」という意味だ。例えば筑駒は最難関大だけで80.7%。その下の難関大の欄には97.1%と書かれているので、最難関大+難関大で全体の97.1%ということだ。このPercentileが50%、過半数を超えたラインを「その高校の生徒の進学先としてのボリュームゾーン」と見てよいのではないだろうか。高校名の欄は色分けされているが、これは左側の色分けに対応しており、同じ色のランクがその高校のボリュームゾーンであることを意味している。

 肝心のMARCH=準難関大以上がボリュームゾーンの学校はどのあたりだろうか。偏差値72の浦和一女、75-72の大宮がこのランクになっているが、パーセンタイルを見てみると70%を超えており、難関大以上でも3~4割いるためやや高いか。準難関大以上が4割~6割程度になっているのは薬園台、専大松戸、柏、三田あたりで、偏差値にして60後半~70前後というラインになりそうだ。偏差値65以下の高校になると準難関大以上に進学しているのは上位2~3割に過ぎず、ボリュームゾーンはその一つ下の中堅校以上…いわゆる「日東駒専」など、というところが大半だ。ただし留意点として、この表に記載されている都立高校は同程度の偏差値の私立校や他県の高校と比較して明らかに優れた進学実績を残している。出典元の偏差値がどのように算出されているのかは把握していないので不明だが、都立高校の偏差値は他よりも少し低めに出ているのかもしれない。

 結論として、MARCHあるいはそれと同程度のレベルの大学に合格することは容易ではないと言えるだろう。偏差値70前後の進学校の生徒ですらようやく上位5割が受かるかどうか、というのが実態なのだから。「MARCHは簡単」などというネット上のくだらない落書きを真に受ける必要はないということだ。